自己紹介

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在米ジャーナリスト。オレンジ・カウンティ・レジスター紙で地域行政や調査報道を担当。アメリカで数少ない日本育ちの報道記者として、他にも現地の司法や経済、スポーツなど幅広く取材。住宅バブル崩壊が南カリフォルニアに与えた影響を調査したシリーズ記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。

2010年2月24日

もし自分が被告人だったら

母親と娘、その元ボーイフレンドが共謀して父親を殺害したとされる裁判を取材している。

事件は五年前に起こったのだが、検察官や弁護人が何度も入れ替わり、裁判が今まで長引いてきた。三人とも殺害への関与を認めたものの、父親の家庭内暴力を理由に、これまで無罪を主張していた。それがボクが偶然傍聴していた公判で、母親と娘が突然有罪を申し立てたので、こっちはびっくり。

法廷を飛び出し、編集長に電話をかけて、インターネットで速報を流した。カメラマンにも急いで法廷へ向かうように伝えた。カリフォルニア州では、判事の許可をとれば、法廷内での写真やビデオの撮影が可能なのである。

このままいけば、母親(41)は第一級殺人罪で禁固25年から終身禁固、娘(22)には第二級殺人罪で懲役15年から終身禁固の不定期刑が宣告される。

二人の選択を事前に知らされていなかった様子の元ボーイフレンド(21)は、目を真っ赤にして静かに泣いていた。彼は被害者に後ろから近づいてバットで撲殺した張本人とされている。この裁判をずっと追ってきたという被害者の友人は、公判後にボクのところに来て、彼が泣いた姿は初めて見たと驚きを口にした。

被告の娘と男性は、事件当時まだ高校生だったが、大人として裁かれてきた。17歳のときに犯した一つの過ちが、その後の人生を決めてしまう。まだ幼さの残る二人が、オレンジ色の囚人服を着て法廷内に座っている姿を目の当たりにして、自分がその立場にいたらどういう心境なのかを想像せずにはいられなかった。楽しい大学生活、目の前に無限に広がる可能性などは全て消え去ってしまう。

判事や検察官、弁護人が時に機械的に進める裁判だが、そこには死や人生といったドラマがあることをひしひしと感じた。

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2 件のコメント:

  1. >まだ幼さの残る二人が、オレンジ色の囚人服を着て法廷内に座っている姿

    胸が痛くなる日記でした。
    色々な恵みが平等に皆に与えられていればいいのに、
    そうではないから引き起こされる悲劇。
    でも新聞の片隅の事件でも、読んだ次の日には忘れてしまうような事件でも、
    その人のかけがえのない一生は、当たり前だけど、一度しかない。
    それは直視するのに息がふさがれるほど重く苦しい事実で、
    恐ろしいことに、世の中にはそんなことが溢れかえっている。
    部署が移って本当に大変そうでめちゃくちゃ応援してるけど、
    あんまりこういう苦しみを真正面からまともに受け止めると、
    とても仕事どころではなくなってしまうかもしれないから、
    もちろん真摯に職務は全うすべきだけど、
    朋哉の心のスペースは守ってね。

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  2. sakiko,
    あったかいコメントをありがとう。仕事としても個人的にもこれまで経験したことのない世界を垣間見てる。毎日悲惨な事件を聞いていると、感覚が麻痺してしまうんじゃないかと心配だけど、一つ一つの裁判には誰かの人生、悲しみがあるんだと意識しながら仕事をしていけたらと思う。

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