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在米ジャーナリスト。オレンジ・カウンティ・レジスター紙で地域行政や調査報道を担当。アメリカで数少ない日本育ちの報道記者として、他にも現地の司法や経済、スポーツなど幅広く取材。カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞、オレンジカウンティ記者団協会の調査報道賞などを受賞。ジャーナリズムコンテストの審査員を務め、アメリカの大学生や高校生にライティングやジャーナリズムの指導も行う。

2016年1月18日

ネイティブに勝つために必要なのは英語ではありません

以前、相手に興味を持つこと、話に耳を傾けることの大切さについて書きました。僕は仕事を通じて、これを日々実感しています。

ジャーナリストにとって、情報源との信頼関係を築くことは最も大切なスキルの一つ。時にはスクープにつながるような情報を得られることもあります。僕は司法担当として裁判所に入り浸っていた3年間、普段の何気ない会話を通じて、弁護士や職員との強い信頼関係を築くことができました。(ただし、公正な記事を書くことは更に大切です。)

といっても、機知に富んだジョークを飛ばしたり、相手が聞き入るような面白い話をしたりしたわけではありません。僕はただ相手の話を聞いていただけでした

検察が何をする職業なのか知らないくらい、司法について全くの素人だった僕は、少しでも知識を得ようと必死でした。学びたいという姿勢を見せ、自分が無知であることを隠しませんでした。それは何も仕事の話だけに限りません。

裁判所に通い始めたある日、休憩中の法廷内に入ると、雑務や警備を担当する若い警察官がナイフの専門誌を読んでいました。そんなニッチな雑誌があることに驚き、彼にナイフが好きなのかと尋ねました。そこから、ナイフにどんな種類があるのか、実際に使う機会はあるのかなど、興味にまかせて質問すると、彼がナイフの魅力について熱く語ってくれました。


人は興味や情熱を持ってることについて話を振られるだけで嬉しくなるもの。


その警察官とは、その後も度々雑談で盛り上がり、距離が一気に縮まりました。おかげで重要な判決があるたびに、僕に電話で知らせてくれるように。関係者以外は法廷に入れない時でも、僕は特別だといって入れてくれることもありました。

同じように、殺人事件を担当するベテラン公選弁護人とも、事件や法律だけでなく、家族やプライベートについて話す間柄になりました。彼が元モルモン教信者だったこと、どうして脱退したのか、その後の人間関係や、離婚、恋愛などあらゆることを話してくれました。取材源として適度な距離を保ちながらも信頼されていると実感できると、記者として自信につながります。

信頼関係が生まれてからは、彼は関わっている殺人事件についてもオープンに話してくれるように。取材で関わることがなくなってからは、息子くらいの歳の僕を、家族の感謝祭ディナーに招いてくれました。そして僕が現在の新聞社に移ると伝えた時は、他の公選弁護士たちを呼んで、お別れパーティーを開いてくれたのです。

裁判所を取材した3年間で、僕は人に興味を持つことの大切さを学びました。

取材する事件に直接関わる検察官や判事から、ボランティア職員やセキュリティーガードまで、分け隔てなくみんなのことを知ろうとしました。どんな仕事を任されているのか、週末は何をしているのかなど。

彼らのことを知ろうとすればするほど、みんな僕に心を開いてくれるようになったのです。

よく、記者というからには文章力があるんですね、英語が完璧なんですね、なんて言われます。そんなことありません。英語で文章を書くのは今でも苦痛です。英語もノンネイティブならではの間違いをすることはしょっちゅう。

でも言語面でのハンデを補、ネイティブと対等に、もしくはそれ以上に渡り合うことができたのは、僕に「聞く」能力があったからです。高い言語能力を問われるジャーナリズムでさえ、コミュニケーション力によって日本人が活躍するチャンスがあるのですから、他のビジネスでの効き目は言うまでもありません。

皆さんも、英語で話すことよりも、まずは耳を傾けることに意識を向けてみてください。

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