自己紹介

自分の写真

在米ジャーナリスト。オレンジ・カウンティ・レジスター紙で地域行政や調査報道を担当。アメリカで数少ない日本育ちの報道記者として、他にも現地の司法や経済、スポーツなど幅広く取材。住宅バブル崩壊が南カリフォルニアに与えた影響を調査したシリーズ記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。

2016年12月26日

カリフォルニアで嗜好用大麻が合法化 専門家に実態を聞きました

追記:日本の大麻取締法は国外でも適用されるので、日本人がカリフォルニアやコロラドなどで大麻を所持しても罰せられます。

ドナルド・トランプ氏の勝利に世界中が驚愕した11月8日の選挙。カリフォルニア州の住民は、もう一つの大きな選択を迫られました。

すでに医療目的での使用が認められている大麻の娯楽使用を認めるか否か。住民投票の結果、57パーセントが賛成で州法修正案第64号は承認されました。全米では4州目ですが、最大の人口を誇るカリフォルニアが加わったことで、他州にも影響を与えるのではないかと言われています。

日本では芸能人が逮捕されてよく耳にする大麻ですが、一般人はその実態についてほとんど知らないのではないでしょうか。かくいう僕も、「大麻=マリファナ」だと知って驚いた一人です。日本のメディアでは、コカインや覚せい剤などと同等の違法薬物として厳しく取り締まられる大麻ですが、アメリカでは以前からかなり広く使用されていたからです。

2014年の調査では、2220万人もの人が過去1ヶ月に大麻を使用したことがあると答えています。僕が大学時代に留学していた時も、周りに吸う人が当たり前のようにいてびっくりしました。過去の使用を認めているオバマ大統領は、大麻はタバコやアルコールと同じように規制されるべきだと最近のインタビューで話しています。

多くの日本人が住むカリフォルニアで合法化された大麻ですが、いつ、どこでも吸ってもいい訳ではありません。しばらくはお店で買うこともできません。

今回は、その複雑な規制を理解するため、メインストリームの新聞では珍しい大麻担当記者を務める同僚ブルック・スタッグスに話を聞きました。彼女は州法修正案第64号が通ってから、カリフォルニア中のテレビやラジオから引っ張りだこになっている、まさにこの分野のエキスパート。素人にもわかりやすく、大麻合法化の実態について語ってくれました。

オレンジ・カウンティ・レジスターで大麻問題を取材する同僚ブルック・スタッグス


地元テレビ局のニュース番組で大麻に関する質問に答えるブルック。

Q. 大麻は日本では覚せい剤などの違法薬物と同じように厳しく規制されています。ほとんどの人は見たこと、匂いを嗅いだことすらありません。アメリカでは大麻はどのように受け止められているのですか?

A. 過去50年で人々の認識は大きく変わりました。最近の全米調査では60パーセントの人が大麻は合法化されるべきだと答えています。

大麻の使用には、薬としての医療目的とお酒のような娯楽目的の二つの側面があります。現在では28州とワシントンDCで医療用大麻の使用が認められています。さらに過去4年間で、娯楽用大麻を認める州が出てきて、今回の選挙でその数は8州になりました。そうした州では、人々は家の中で(原料となる)アサを育てたり、1オンス(28グラム)まで持ち歩いたり、家の中で使用したりしても警察にとがめられなくなりました。

大麻はすでに最も手に入れやすい麻薬です。子どもに大麻とビールのどっちが手にはいりやすいかと聞くと、大麻だと答えるそうです。アルコールは厳しく規制されていて、21歳以上だと証明する免許証を提示するか、大人に買ってもらうしかありません。大麻は道端や学校などで(違法ディーラーから)簡単に買えます。あまりに手に入りやすいため、事実上合法化されていたと考える人もいたくらいです。それでも家で育てたり、車の中から見つかったりして逮捕される人はいました。

でも大麻に否定的な見方をする人もいます。彼らは大麻が脳にダメージを与えたり、怠惰や社会的不成功の原因になると考えます。でも最近では、健康な成人がたとえ常習したとしても長期的な健康被害はないことを示す研究が出てきています。その一方、(研究によっては25歳くらいまでの)若い人の常習使用にはリスクが伴います。脳がまだ発達途上だからです。

いずれにせよ、大麻はまだまだ研究が必要な分野です。まだ連邦レベルでは違法なため、信頼できる大掛かりな調査がしづらいのです。連邦政府は、いまだに大麻をヘロインと同等の違法薬物だと位置付けています。どんなに多くの大麻によって救われたという人が証言しても、連邦政府は大麻に医療的価値があることを認めません。科学的証拠が不十分だから。

Q. 今回の合法化によって、何が変わりましたか?

A. 承認直後からカリフォルニアの人々は自宅内で大麻を使用できるようになりました。一世帯でアサを6本まで栽培することができます。また1オンスまで持ち歩くことができ、それを譲渡することもできます。また刑法上のあらゆる罰則が軽くなりました。これは法が承認される以前に捕まった人にも適用されます。これらの変更は既に施行されています。

まだしばらくかかるのが、大麻事業の認可です。あと1年くらいで、大麻を売るお店がオープンし始めて、21歳以上だと証明する運転免許証を持っていれば、様々な大麻製品を1オンスまで買うことができます。他にもアサ農家や宅配サービス、実験室などの事業も認可が必要です。

Q. 家の外では吸うことはできないのですか?

A. 公共での使用は禁止されています。家の中か、特別な認可を得たスモーキング・ラウンジと呼ばれる商業施設に限られます。ベランダでの使用に関してはまだはっきりしていませんが、タバコと同じように学校の近くでは、たとえ自分の敷地内であっても屋外での使用を厳しく禁止されています。

Q. 大麻を合法化するメリットなんですか?

A. 多くの人は税収をあげます。大麻はすでに大きな市場を形成していますが、これまで税収はありませんでした。大麻の合法化により、カリフォルニアでは年10億ドル(約1170億円)の税収が見込まれています。そのお金は大麻の実験や研究、若い人の薬物使用予防プログラムなどに使われます。

合法化されて、きちんと規制されれば、逆に未成年が大麻を手に入れづらくなるという人もいます。また若者は禁止されていることをやりたがる傾向にあるので、合法化されれば大麻を使おうという気が失せるのではと指摘する人もいます。

使用者が道端の違法ディーラーから大麻を購入すると、そこでさらに強い麻薬を勧められる危険性もあります。でも正規のお店で大麻を手に入れられるようになれば、ディーラーに会うことはなくなります。

きちんと規制されることで、ちゃんと安全性が確かめられた製品が出回るメリットもあります。

Q. 合法化に反対する人の主張は?

A. まだわかっていない健康への被害を心配する声があります。

若者に間違ったメッセージを送ることになると主張する人も多いです。すでにアルコール依存症などの問題があるのに、そこに脳の働きに影響を及ぼすもう一つ危険物を認めるのかと。

Q. 日本からの観光客は大麻を使用できますか?

A. はい、新しい法は州内にいる全ての人に適用されます。ただカリフォルニアの外に持ち出すことはできません。大麻を所持して車や飛行機で州境を越えることは許されていません。同じく大麻が合法化されているオレゴン州やワシントン州に行く場合もです。カリフォルニア内で買って、ここで使用して、置いて帰らなくてはいけません。

Q. 1年間はショップが認可されないということですが、観光客はどうやって大麻を手に入れればいいのですか?

A. いい質問です。外国からの観光客には難しいでしょうね。今は実質的に栽培するしか嗜好用大麻を手に入れる方法はありません。成長したアサを買うこともできますが、まだそれを買う場所がありません。1オンスまでの譲渡が許されているので、誰かが医療用マリファナカードで大麻を買って渡すことはできますが、対価を支払うことは禁止されています。

旅行者でも医療用カードを手に入れることはできます。私自身が取材で試した時は、いとも簡単に発行されました。ほぼどんな症状を申告しても認められるので、ちょっと胡散臭いシステムですが。カリフォルニアの住所を書かなくてはいけないのですが、ホテルの住所でも発行されたという話を聞きました。

Q. 嗜好用大麻がすでに合法化されている州では、どんな影響が見られますか?

A. コロラドが初めて大麻ショップをオープンさせた州です。意見は分かれています。州は大きな税収を得て、新しい職業も生まれました。大麻よりも害が大きいと言われるお酒の代替品にもなっているようです。

一方、大麻の中心地として全米から人が移り住んだことで、賃貸価格が上昇しました。でもカリフォルニアが合法化されたので、価格は下がることが予想されます。これからはおそらくカリフォルニアが中心地になるでしょう。

因果関係はわかりませんが、ホームレス人口や犯罪の上昇につながっていると指摘する人もいます。大麻摂取過多で亡くなった人はいませんが、大麻のとりすぎでERに駆け込む人が増えました。これは摂取量をコントロールしづらい食用の大麻でよく起きます。間違って子どもやペットが食べてしまうこともあります。

大麻使用後の運転に関しても議論が起きています。薬物使用運転が増えたという調査もありますが、大麻成分はアルコールなどに比べて体内に長く残るので、いつ使用したのか判断できないという問題があるのです。大麻を吸ったのは一週間前で、明らかにその影響はないのに、体から成分反応が出ることもあります。だから就業規則や運転規則を作るのが難しいのです。週末に大麻を使用して、陶酔感は消えているのに、職場のテストで反応が出ればクビにされることもあります。



日本では覚せい剤やコカインなどの薬物と並んでタブー視されている大麻ですが、科学的にはアルコールよりも健康や社会への被害が少ないといわれています。使用を認めるか否かは別にして、日本でも事実に基づいた報道や議論がなされてほしいものです。

このエントリーをはてなブックマークに追加

0 件のコメント:

コメントを投稿