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在米ジャーナリスト。オレンジ・カウンティ・レジスター紙で地域行政や調査報道を担当。アメリカで数少ない日本育ちの報道記者として、他にも現地の司法や経済、スポーツなど幅広く取材。カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞、オレンジカウンティ記者団協会の調査報道賞などを受賞。ジャーナリズムコンテストの審査員を務め、アメリカの大学生や高校生にライティングやジャーナリズムの指導も行う。

2017年8月23日

O.C.の観光名所ラグナビーチで目の当たりにした思想の激突

先週に引き続き、またもや政治デモを取材してきました。

リベラル vs 保守:埋まらない米社会の溝

オレンジ郡きってのリゾート街ラグナビーチで、保守とリベラルの集団が衝突。警察の素早い介入もあって大きな暴力沙汰にはならなかったものの、およそ2500人がダウンタウン近くの人気ビーチエリアに集まりました。3人の逮捕者が出て、まさにカオス。


元々は保守派の人々が定期的に開いている不法移民に反対する集会で、これまでは何の注目も浴びていませんでした。でもシャーロッツビルの事件があって、白人至上主義者たちが参加するという情報がネットで流れたことで、左派による反対抗議デモが同時に行われることに。南カリフォルニア中から抗議者やジャーナリストがなだれこみました。



レジスターも、記者2人、カメラマン3人を現場に派遣。日曜の夜番に見事に当たったので、僕も駆り出されました。

右派によるAmerica First!(アメリカ第一)集会は6時半に始まる予定なのに、すでに4時にはプラカードやバナーを手にした抗議者たちが100人以上、ビーチ横の広場に集まっていました。

一方、America First!側は20人いるかいないか。周りでは、休日をビーチで過ごす家族づれなどの一般人が、何が起きるのかと視線を注いでいます。

ビーチには更に抗議者が集まり、保守派の人々に口論を挑み始めます。中には、「Racist!(差別主義者)」「ナチス野郎」と罵声を浴びせる者や、メガフォンで相手を挑発するようにののしる明らかな扇動者も。

収集がつかなくなってきたところで、ついに警察が登場。



ヘルメットや警棒、更には自動小銃といった暴動鎮圧用の装備をまとい、広場の真ん中に並んで両サイドを引き離します。僕は右派側について取材を続けました。

警察越しにも、広場のあちこちでお互いを「コミュニスト!」「差別主義者!」などとやじり合いが続きます。大人の議論になるわけもありません。

America First!側にいると、数で圧倒する抗議者たちから、ひっきりなしに声を合わせたスローガンも聞こえてきます。「ナチスは帰れ!」「ファシストやKKKはアメリカにはいらない!」など。


確かに、首にナチスのシンボルを刺青している男性が1人いましたが、それに気づいたAmerica First!のメンバーたちに追い出されます。

America First!参加者にインタビューをして分かったのは、トランプ支持や不法移民に反対といったゆるい共通項はあるものの、多様な信条やバックグラウンドを持っているということ。白人はもちろん、黒人、ヒスパニック、男性、女性、退職軍人、プール清掃員など様々です。

不法移民による犯罪の犠牲者を弔う人、陰謀説を唱える人、ひたすらメディアを批判する人など、参加者によって強調することも違います。

そして、それは抗議者側も同じ。

警察暴力に反対するBlack Lives Matterや社会主義党、反ファシズムなどのグループに属する人々や、トランプ政権に不満を持つ個人などが集まっています。

America First!に参加したリサ・コリンズさんは、白人至上主義者やKKKや差別主義者、偏屈者などと呼ばれることが何より不快だと言います。

「もしかしたら、集会にはそういう極端な人が1人か2人紛れ込むこともあるかもしれません。だからといって、グループ全体が極端なわけではありません」

こういう集会やデモに参加する人々やグループは、ひとくくりには語れないのです。

でも過激な発言をしたり、暴力に走ったりする人ばかりがフォーカスされることで、お互いにレッテルを貼りあってしまう。これがオレンジ郡だけでなく、全米で起きている現実です。

僕は目撃しなかったのですが、午後9時くらいになって小競り合いが起きたようで、たまりかねた警察がついに解散命令を出します。警察官が列になって街の中心部から人を追いやっていき、集会は静かに終わりを迎えました。



いつもは夜でもにぎわうメイン通りは封鎖され、車一台いなくなる異様な光景。


さすがに憎悪の応酬を5時間も見せ続けられたので、最後はげんなりしてしまいました。

でもそんな時、取材中に出会った2人の女性のことが頭に浮かびました。

ネオナチが集まると聞きつけて、婚約者と抗議に参加したコリーン・セントクレアさん。まずは相手の話を聞こうとAmerica First!側にやってきました。

そこで出会ったのが、自分と同じく「LOVE」と書かれたサインを持っていたテナヤ・デルガドさん。2人はサインのこと、どうしてデモに参加しているのか、移民問題などについて話し始めます。

するとお互いが思っていたような過激な人ではないと気づいたと言います。

「最初は怖い人たちだと思っていました。でも彼らが私たちの近所に住む人と何ら変わりないのだと分かったのです。私たちは同じように、みんなが安全で幸せに暮らして、そして自由に意見を言える社会を求めているのだと」とセントクレアさん。

デルガドさんも、「アメリカが素晴らしいのは、異なる信条を持つ人たちが一つの国に暮らしていけるところです。こんなに分かれているのはおかしい」と言います。

2人はハグをしてから、笑顔で別れました。


いつか近い将来、こんな風に思想の違う人々がお互いのことを分かり合える日が来ますように、と願わずにはいられません。

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